教区報

教区報「あけぼの」

あけぼの2023年4月号

巻頭言 イースターメッセージ 主の復活は全てを結び直す」

 

 

キリスト教における「復活」とは、もちろん主イエス・キリストの十字架の詩と葬り、そして復活と昇天によって完成された、人間の「罪の死」からの解放を指す言葉であり、私たちを罪から救い出し、永遠の命へと導いてくれる神様の恵みです。そしてそれは、女性たちが「恐れながらも大いに喜び~弟子たちに知らせるために走って行った」(マタイ28:8)とあるように、人間を絶望から希望へと「復活」させてくださる恵みでもあります。

 

そんな大いなる恵みである主の復活ですが、すでに3年を過ぎた新型コロナウイルス感染症という未曾有の事態、あるいは1年前から起きているウクライナへのロシアによる軍事侵攻を目の当たりにして生きている私には、これらの恵みに加えて「全ての分断を結び直す」という復活の恵みも神様に与えられていると感じてならないのです。

 

 

世界は今現在様々な「分断」に溢れています。ウイルスは人々の顔に「マスク」という分断をもたらし、人の笑顔を見えにくくしてしまいました。またこの事態は、以前から進んでいた人々の「電脳空間」への依存を加速させ、本来人が直接出会うことで感じる温もりや喜怒哀楽といった人の心の間に「分断」を作り出し、心ない言葉の暴力を平気で世界に発信出来てしまう人間を増やしてしまいました。加えて1年前に始まってしまったウクライナ侵攻は文字通り世界を「分断」しました。

 

しかしこのような「分断」ばかりの世界にあっても、やはり希望は主イエス・キリストにこそあるとも感じられるのです。2023年の1月に久しぶりに開催できた「中高生プログラム」においては、教会に集い笑顔で未来を語り合う、子どもたちの姿を見ることが出来ました。またこの3年間、今まで通りとはいかない中でも、やはりイエス様を中心として集う日々の礼拝には信仰と祈りの輪が実現していましたし、そこにある「人と人」「人と神様」の繋がりは、確かなものとして存在していたからです。

 

 

これらのともすれば当たり前にも思えることが、今の世界で「復活」させなければならない「分断を超えて結び直すべきもの」であるのだと思います。そしてその中心にはイエス様がおられるのだと、私は確信しているのです。

 

そしてこの事実は私たちに、今のこのような世界にあっても、私たちは決して絶望することも、その必要も無いことを教えてくれます。何故ならこの未曾有の事態が広がる世界にあっても、主の復活の恵みは確かに働いているからです。確かに目に見える部分では、以前よりも後退してしまったと感じられる部分もあるかもしれません。しかし逆に言えば、私たちはイエス様が教えるように「最後まで耐え忍ぶ者」(マタイ24:13)として、今この時立ててもいるのだと思います。

 

だからこそ私たちはこの主の復活を祝うこの時に、ますます力づけられて、「今の世界に不必要な分断を無くして全てを結ぶ、神様の復活の奇跡が、確かに教会にある」ということを、少しずつでも広げていこうではありませんか。またこの4月には、新主教の按手・就任という、教区としてのまさに「新しい命」の歩みが始まろうとしているのですから。

 

 

福島聖ステパノ教会牧師 司祭 パウロ 渡部 拓

 

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