教区報

主教コラム

礼拝堂探検隊 第22回「クリーデンス・テーブル」

 

祭壇の左側(東面の時は右側)に置いてある小さなテーブルのことを「クリーデンス・テーブル(credence table)」と呼びます。

 

教会では、聖餐式に用いるパン・ぶどう酒などを用意しておくテーブルのことを指しますが、クリーデンスという英語は、「信用・信頼」という意味で、ラテン語のクレド(credo 私は信じます)が語源だそうです。もともとは味見や試食のための食物を置いたサイドテーブルを指す言葉だったようです。

 

 

 

さて、このテーブルの上に置かれるパン(信徒用のウェファース)を入れる容器を「ブレッド・ボックス(bread box)」と呼び、読んで字のごとく「パン箱」です。またぶどう酒と水を入れる容器のことを「クルエット(cruet)」と呼びますが、これも単なる「小さな水差し」という意味です。ちなみにブレッド・ボックスの右側にあるのは、ラバボ・タオル(lavabo towel)とラバボ・ボール(lavabo bowl)です。ラバボとは「洗手」という意味です。

 

つまり、クリーデンス・テーブルも含めて、その上に置かれる各々の容器は特別なものではなく、ごく一般的・日常的なものであることが分かります。

 

ですから大切なことは、それらの容器に入れられたもの、つまりパンとぶどう酒と水が献げられ、感謝聖別の祈り・聖霊を求める祈りのうちに、キリストの御体と御血とされ、私たちを養ってくださるということではないでしょうか。また私たちの日常性が、祈りと聖霊の働きを通して聖なるものとされるということでもあると思います。

 

その意味で、それらを用意する机が「クリーデンス(私は信じます)テーブル」と呼ばれるのは、奥深い意味があるように思いますが、いかがでしょうか。 

 

 

(教区主教)

 

 

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礼拝堂探検隊 第21回「チャリス・パテン」

今回は聖餐式の時に聖別されたぶどう酒を入れるチャリスと、パン(ウエファース)を入れるパテンです。金または銀で作られていますが、それは酸による腐食を防ぐためだそうです。

 

 

初期の時代のパテン(paten 聖皿)は、会衆から献げられた大きなパンを受けるためにかなりの大きさだったようです。しかし中世中期になりますと、パン(聖体)が種なしの薄いものになった関係で、パテンも小さくなったようです。

 

初期の時代のチャリス(Chalice 聖杯) はガラス製が一般的でしたが、ほかの素材(木製など)を使うこともありました。チャリスの最も古い形は、カタコンベに描かれているもので、二つの取っ手がついた、柄(ステム)のないボウル状だったそうです。

 

4世紀に入ると金製や銀製が一般的になり、それに宝石などを嵌めたものも作られました。もっとも9世紀頃までは陶磁器や木製のものもあったそうです。映画の「インディー・ジョーンズ 最後の聖戦」で登場した聖杯も木製でしたが、宗教改革者ツヴィングリも木製のものを使ったそうです。現在のような形になったのは14世紀だそうです。

 

 

最後の晩餐の記事のように、聖別されたぶどう酒は一つの杯より飲むのが正当とされています。なぜなら主イエスは「皆、この杯から飲みなさい」(マタイ26:27)と言われたからです。プロテスタント教会で個人用のカップを用いる所がありますが、主として衛生的見地から19世紀に米国で始められたものです。しかしこれでは「分ち合う」という意味を弱めてしまうと言う批判もあります。

 

 

(教区主教)

 

 

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礼拝堂探検隊 第20回「祈祷書」

 

今回は「祭壇用祈祷書」です。とはいっても皆さんがお使いの祈祷書と中身は同じで大きいだけですが。

 

 

祈祷書は英語でThe Book of Common Prayer(ザ ブック オブ コモン プレイヤー)と言い、「共同の祈りのための本」という意味です。お祈りや礼拝式文が文書化されるのは3世紀になってからのようですが、今の祈祷書のように一冊本ではなく、礼拝の種類ごとに様々なものがありました。

 

例えば、中世には聖餐式と堅信式を同時に行う時には最低でも「ミサ典書」と「司教用定式書」が必要でした。ですから礼拝によって聖職は何種類もの礼拝書を操らねばならず、また当時の礼拝用書は非常に高価で、信徒用のものはなかったようです。

 

しかし宗教改革は信徒を、聖職が執り行う「聖なるドラマ」の観客から、聖職と共に礼拝を献げる者に変えました。また活版印刷術の発明は書物の大量出版と低価格化を実現しました。

 

 

1549年、英国聖公会大主教T・クランマーは中世の諸礼拝式文を一冊の本にまとめました。それが約470年にわたって、世界の諸聖公会で用いられている祈祷書の最初のものです。

 

クランマーは祈祷書作成にあたって、①複雑な礼拝を単純化する、②会衆が積極的に参加できる礼拝、③自国語による礼拝、④初代教会の慣習の回復、⑤聖書に基づいた礼拝用書にする、の5点を大切にしました。

 

祈祷書は時代の中で何度も改訂されてきましたが、このクランマーの基本方針は忠実に守られています。私たちは至宝の祈り集である祈祷書を大切にし、信仰生活を送りたいと思います。

 

 

(教区主教)

 

 

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