教区報

主教コラム

欅並木から 第17回「ナザレの家に想う」

6fae5a92-s仙台市青葉区台原にある「ナザレの家」は、太平洋戦争後、戦前の「婦人伝道師および幼稚園教師の養成機関」であった青葉女学院復興の希望のもと、現在同区内小松島にある青葉静修館となる建物、幼稚園、さらには教会、牧師館という総合的な視野の中で建築され、とくに1956年に中村信蔵主教の招聘によって来日した米国・変容貌修女会のシスター方が居住して幼稚園への奉仕活動の拠点となった、意義深い歴史を持つものでした。

 

時を経てナザレ修女会の仙台支部となり、また東北教区へと譲渡されてきました。その後も主教や司祭が居住されたり、東日本大震災前まで、宗教学者の山形孝夫氏(宮城学院女子大学長等を歴任)が「命を考える会」、ホスピス・ケアの会の会場とされる等、用いられてきました。大震災による被害と建物・諸設備全体の老朽化からその使用を止めましたが、大震災後の2年間は全国から集まる支援活動スタッフ・ボランティアの住居、活動拠点となって、まさに大活躍したことは、「ナザレの家」の記念にふさわしかったように思います。

 
昨年の臨時教区会で建物の解体、土地の売却が決定しており、この5月からは具体的な作業も進められようとしています。しかし、たんなる解体、売却ではなく、歴史を振り返りながら、小松島にある教会、幼稚園の働き、また同じように黙想・研修的な施設であった青葉静修館の働きを覚えての、新しい形へと繋がっていこうとしていますし、またそうでなければならないと思います。シスター方がおられた頃のことを良く知る信徒はもちろん、近隣の方も多く、やはり「ナザレの家」が一つの幕を降ろすことは残念と思われることでしょう。

 
良い形の記念を残すことが出来ますようにと願っています。

(教区主教)

あけぼの 2016年6月号