教区報

教区報「あけぼの」

あけぼの2021年3月号

巻頭言 東日本大震災 10周年メッセージ「共に祈り、共に歩む」

 

 

 今から10年前の3月11日(金)の午後4時前頃、当時ウイリアムス神学館におりました私は、コモンルームから聞こえた「ウォーッ!!」という叫び声に驚き、急いで降りてみますと、テレビの画面には名取市閖上の浜を遡上する白い波と、その先の道を逃げていく自動車が映っていました。その映像から津波の恐ろしさを感じると共に、「無事に逃げ切ってほしい」と、祈るような思いで固唾を呑んでいた自分、何も手助けのできないもどかしさを感じていた自分がいたことを憶えています。

 

 

✠ 10年、私たちの歩み ✠

 

あれから10年の年月が過ぎました。その間、私たちは自らの復興と同時に、管区やご支援くださった多くの教区の皆様がたと共に、「いっしょに歩こう!プロジェクト」、「いっしょに歩こう!パートⅡ だいじに・東北」の働きを通して、4年間、被災者の方々や被災地の復興に、微力ながら思いと力を注いできました。2015年からは「東北教区東日本大震災支援室」、2019年からは「東日本大震災被災者支援プロジェクト」として歩んできました。

 

この間の私たちの歩みを支えてきたもの、私たちの歩みの原動力となったものは、「私たちの隣りに苦しみ悩む人たちがいる限り、『共に祈り、共に歩む』ことが東北に遣わされた教会の姿である」という確信だったと思います。

 

 

✠ 共 に 祈 る こ と ✠

 

「祈り」は、祈るだけで終わるわけではありません。祈りは「行動」への出発点でもあります。

 

祈りは4つの部分、①神への呼びかけ、②神の救いの御業を述べる(感謝)、③祈願、④とりなし(結び)から成っています。私たちは3番目の「祈願」の部分で、「私たちはこうありたい、こうあってほしい」と願います。神様は私たちのこの願いを受け止めてくださり、私たちがそうあれるように促し、勇気づけ、願いの実現に向けての第一歩を踏み出させて下さるのです。

 

そして私たちは「共に祈る」ということを大切にしようとしています。共に祈るためには心と思いを一つにすることが求められます。

 

 

✠ 共 に 歩 む こ と ✠

 

私たちが大切にしようとしているもう一つの点は、「共に歩む」ということです。私たちは各々、歩幅も違いますし、歩く速度も違います。

 

そんな私たちが「共に歩む」ためには、互いの歩き方や速度、歩いていく方向を、互いに感じあい、気配り・目配りしなければなりません。そうでなければ、一緒に歩いているつもりで、いつの間にかバラバラになってしまうかもしれないのです。

 

では、誰に合わせればよいのでしょうか。やはりそれは共に歩んでいる中で、一番ゆっくりの人に合わせることが大切ではないでしょうか。

 

 

✠ も う 一 度 原 点 に ✠

 

大震災から10年の年月が過ぎました。私たちはこれからも「私たちの隣りに苦しみ悩む人がいる限り、『共に祈り、共に歩み』続けていきたい」と思います。それはまさに、ご復活の日の夕方、エルサレムからエマオへ失意のうちに歩いていたクレオパともう一人の弟子に近づき、一緒に歩いてくださったご復活のイエス様、パンを祝福して祈ってくださったイエス様に倣って歩むことではないでしょうか。

 

 

教区主教 主教 ヨハネ 吉田 雅人

 

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