教区報

教区報「あけぼの」

あけぼの2023年3月号

巻頭言 東日本大震災メッセージ 「がれきを拾う」

 

 

「ごく小さな事に忠実な者は、大きな事にも忠実である。ごく小さな事に不忠実な者は、大きな事にも不忠実である。」
(ルカ16:10)

 

阪神淡路大震災から28年が経ち、まもなく東日本大震災からは7年、西日本豪雨からは5年がそれぞれ経過しようとしています。それ以外にも日本全国で規模や被害の大きさはそれぞれですが、自然災害が起きています。

 

私は阪神淡路大震災も東日本大震災も被災はおろか、ボランティアの経験もありませんでした。私のボランティアの初めては熊本地震の時でした。当時は熊本城が被害に遭ったことなどがよく報道されていましたが、主な被災地域は益城町という小さな集落でした。梅雨時期ということもあり、大雨の中、倒壊した自宅横に張ったテントの中で生活している人などにお声がけして手作りのおかずを持って訪問しました。晴れの日には肌を刺すような日差しの中、ブロック塀を撤去し、土のう袋に詰める作業や被災したお寺のがれきを運ぶ作業をさせていただきました。たった3週間の短い期間でのボランティアでしたが、教会の中だけでは出来ない学びの多い経験でした。

 

その2年後、山陽を中心とした西日本豪雨災害が発生し、私はボランティアセンターのスタッフに任命されました。社会福祉協議会の指示のもと、土砂のかき出しやがれきの撤去作業をさせていただきました。

 

 

ボランティアには色々な思いを持って皆さん来られます。熊本地震では、熊本城の修復に関われると意気込んで来られた方もよくおられました。西日本豪雨では、ニュースで連日報道されていた被害の大きな地域に行けると思って来られた方もおられました。社会福祉協議会を通さないで別の被災地域に行こうとされる方もおられました。被災地で自分の行なっているNPO法人の活動を宣伝する方もおられました。トラックや重機を借りて作業したいという方や、避難所に行って被災して困っている人と交流したいと言われる方もおられました。ボランティア精神にあふれた熱意ある善意は実に多種多様で、本当に色々な思いを抱えてボランティアに来られているんだなと感じました。

 

しかし、実際にボランティアに出来ることは限られています。土砂崩れが起きたばかりの危険な場所へは行けませんし、全壊しそうな建物には近づけません。道具も作業時間も限られ、細かく地道で疲弊する作業が連日続きます。什器や大きな道具を使った派手な作業は行政などから委託された業者の方がされます。避難所などへは医療従事者の方々が行かれます。私たちが出来ることは、お祈りとひたすら0がれきを拾う手作業などだけです。それに対して、不満を持つ方もやはりおられたことを記憶しています。

 

しかし、そのがれき一つを拾うことからボランティアは始まります。足元に落ちているがれきに目を向けられず、大きな目標や理想のボランティア像ばかりを目指しても、被災者の本当の気持ちには寄り添えないのです。

 

起こってほしくはないですが、おそらくいつか災害は起こるかと思います。その時に私がどのような立場にいるのかわかりません。しかし、目立たなくていい。大きなことができなくていい。静かな祈りと共に足元の小さながれきを拾うことを大切にできたらと思います。

 

 

八戸聖ルカ教会副牧師 司祭 テモテ 遠藤洋介

 

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